TG.ヒーター外管の材質(ファミリー)について

谷口ヒーターズでは、まず、装置(槽など)やその規模によって一般処理槽・ミニ槽(実験用)・特別槽(凍結・結晶防止用/貯蔵槽)などのグループに分けて、それぞれのグループの中で使用スタイル別に潜水式・防水投込式・槽横挿入式などのシリーズに分類しています。

グループの区分・分類

用途に適切な選択をして頂くため、さらにシリーズ内で使用する薬液に応じた外管の材質(フッ素樹脂・石英・ステンレス・チタン・セラミックなど)ごとにファミリーとして類別しています。

シリーズの区分・分類 フッ素樹脂ヒーターファミリー 石英ヒーターファミリー ステンレスヒーターファミリー チタンヒーターファミリー セラミックスヒーターファミリー

カタログやサイト内の各商品のページは使用スタイル別のシリーズにて分類していますので、本ページではヒーター外管ごとの区分のファミリーについて説明いたします。

ヒーター外管の材質は耐薬性と密接に関係しています。 フッ素樹脂ヒーターファミリーは、製品ごとに耐薬性が異なりますのでご注意ください。
TANIGUCHI HEATERS 製品のpH耐薬目安
  • 上の図は目安です。薬液の種類によって性質が異なりますので、pHだけで判断しないでください
  • 濃い青緑色の部分は各モデルごとの実績による目安ですが、耐薬性を保証するものではありません。
    比重・濃度・粘度の高さ、混合液、添加剤の種類や量、液温度などによって耐薬性が変化します。
  • 薄い青緑色の部分は限定された条件での目安の範囲です。

特許システム《キャップレス潜水®》《キャップレス防水®》について

当社の歩みは、1947年(昭和22年)に液加熱ヒーターとして初めて石英投込ヒーターの特許を取得したことに始まりました。その後、改良を重ね、液中に沈めて使用する《潜水》タイプのヒーターを開発するとともに《投込》タイプも性能を向上させて防滴から防水へと進化し、《潜水》《投込》ともに特許の防水システムとなりました。

市場にある一般的な投込ヒーターは、発熱部を内蔵した外管にゴムやシリコンや樹脂のキャップを取り付け、そこから電源コード(リード)を引き出す構造を採用しています。一方、当社では「美しさも機能」とするインダストリアル・アート・デザインのテーマと理念のもと、デザインと機能の調和を追求。潜水タイプの開発で培った独自ノウハウを投込タイプにも応用し、キャップ部と外管を同じ素材で一体化した新たな防水技術を開発しました。

この技術を《キャップレス》と命名し、《キャップレス潜水®》《キャップレス防水®》として意匠も取得しました。防水一体構造により、旧来のキャップ部にあった耐薬性や耐久性、絶縁性などの課題までも解消しました。キャリア(搬送装置)の干渉を防ぐ〝新防水方式〟のキャップサイド防水も防水一体構造です。

この防水・潜水システム《キャップレス》はTGコア技術の一部となり、1972年(昭和47年)以降に発売の石英ヒーターステンレスヒーターチタンヒーターフッ素樹脂ヒーターの各ファミリーの《キャップレス》モデルとなりました。防滴型の旧世代商品は、それらを使用中のお客様へのアフターサービスとして販売を継続していましたが、2006年の基本設計改革〈新世代化〉を機に、製品全体のクォリティを高めるため、日本国内での旧世代商品の販売を終了しました

基本設計改革〈新世代化〉以降の《新世代商品》は、潜水式・防水投込式ともに国際安全標準のCE(安全)マーク認証IPX8(JIS防水保護等級8)を取得。さらに、長年の使用実績を重ねることで高付加価値を実現しており、最大効果を発揮する優れた性能と品質が高く評価されています。

TG.フッ素樹脂外管ヒーター《フッ素樹脂ヒーターファミリー》

フッ素樹脂は、非常に優れた特性を持つ高性能なプラスチックで、強酸・アルカリにも適用できる耐薬品性と高い電気絶縁性を持ち、難燃性で燃焼しにくい材質です。耐疲労性や耐クラック性も高く、長期間の使用にも耐えます。また、フッ素樹脂外管ヒーターは金属系の外管材質とは異なり、加熱する液が酸やアルカリでも金属イオンが滲出しません。

これらのことから、フッ素樹脂外管ヒーター《フッ素樹脂ヒーターファミリー》の用途はオールマイティなのですが、製造工程の複雑さや特殊な加工技術を要すること、さらに、原料となるフッ素の希少性があるため、他の外管材質のヒーターと比較すると高価になります。

谷口ヒーターズのフッ素樹脂ヒーターファミリーは、コストパフォーマンスを高めるため、用途に対して必要以上のオーバースペックとならないように、フッ素樹脂の種類や被覆の厚さ、被覆方法などのバリエーションにより数種類のラインナップとなっています。

ヒーター名 耐 薬 参 考
フッ素樹脂(PTFE)パネル10mm厚
ヒートフロン®
ヒートフロロ®
フッ素樹脂(PFA)被覆1.5mm厚
ヒートフロン代替モデル
潜水UU・フロン® UMT/UML
強酸・強アルカリ・純水向。
金めっき浴・銀めっき浴・半田浴・クローム浴・化研浴・フッ化浴・リン酸浴、無電解、硝酸・塩酸・硫酸・純水・超純水等の半導体生産・表面処理ラインに最良。ガス透過性が低いため、フッ酸や王水へのご採用が多い。
フッ素樹脂(PFA)被覆1mm厚
潜水UU・フロン®
強酸・アルカリ・純水向。
金めっき浴・銀めっき浴・半田浴・クローム浴・化学ニッケル浴・ピロリン酸銅浴・化研浴・フッ化浴・リン酸浴・エッチング浴、ロジウム浴、無電解、硝酸・塩酸・硫酸・純水・超純水等の半導体生産・表面処理ラインに採用多数。
  • フッ酸や王水などガス透過性のある強酸、比重の高い薬液、液温90℃以上での使用については、ご相談ください。
フッ素樹脂(FEP)コート300μm厚
タニフロン®
一部の酸~弱酸・水向
  • 適用する酸についてはご相談ください。
フッ素樹脂(PTFE)チューブ0.5mm厚
テフチューブ®
弱酸・水向
  • 強酸・強アルカリ・アルカリ液は適用外です。
薬液のpH・比重・濃度・粘度の高さ、 混合液、添加剤の種類、量、液温度など(各モデルのカタログに記載されています)によって 耐薬性は変わりますので、耐薬の保証はできません。 上記は当社の耐薬基準(比重1.1MAX)による目安です。ヒーター選択のご参考にしてください。 不明の場合はご相談ください
ヒートフロン/ヒートフロロ 潜水UU・フロン 潜水UU・フロン/凍結・結晶防止用 タニフロン/タニフロンTI タニフロンTI《超ミニ》 テフチューブ

TG.石英外管ヒーター《石英ヒーターファミリー》

石英ヒーターファミリーは、谷口ヒーターズの「ものづくり」の原点となった製品です。

当社の創業者(初代)は、戦艦大和で艦内ヒーターの保守・保全を担当していました。戦後すぐに家電器具や電気コンロなどの修理を行う一人工場として事業を始めましたが、やがて横須賀海軍学校の元教官や先輩たちが初代のもとに集まりました。その中で石英ガラスメーカーを定年退職した先輩が耐酸性の石英管を持ち込んだことをきっかけに、液中加熱用の石英投込ヒーターを開発し、特許を取得しました。 ヒーター外管材質として高純度の無水ケイ酸(SiO₂)を溶融した「不透明石英ガラス(Silica Tube Glass)」を採用しました。

当時の日本の表面処理(メッキ工場など)では、薬液の入った金属タンクを外側から加熱するのが一般的でした。この方法は熱効率が悪く、温度制御も難しいという課題がありました。そのため、液中で加熱する石英投込ヒーターの需要は必然的に高まり、1947年(昭和22年)に液加熱ヒーター専門の製造会社として谷口ヒーターズの前身である株式会社谷口製作所を創業するに至りました。

その後、当社独自の防水技術で開発された特許《キャップレス潜水®》によってヒーター本体を液中に沈めて使用する《キャップレス潜水®ヒーター》が誕生すると、当社の従来製品の投込ヒーターの防水仕様も進化してTGコア技術として確立、キャップレス潜水®やキャップレス防水®、キャリア搬送の邪魔をしない〝新防水方式〟のキャップサイド防水、タニフロン®、UU・フロン®、槽横挿入といった多種多様な新世代商品のヒーターの礎となりました。

石英外管ヒーター《石英ヒーターファミリー》は金属系の外管材質とは異なり、加熱する液に金属イオンが滲出しませんので、金属イオンを嫌う薬液にも向いています。また、理化学用途などには超高純度石英である透明石英の外管ヒーターも特殊型として製作しております。

石英ヒーターファミリーは弱酸性から中性の液に適しています。アルカリ性の薬液を使用される場合は、他の材質(ファミリー)のヒーターをご検討ください。

ヒーター名 耐 薬 参 考
不透明石英 Iクラス
キャップレス潜水®キャップレス防水®
石英ヒーター
弱酸向。
半光沢ニッケル浴・光沢ニッケル浴・硫酸銅浴 等
  • クローム浴は適用外です。
  • 強酸(塩酸・硝酸・硫酸・リン酸等)、フッ酸、フッ化物含有液(例:添加物入りクローム液等)は適用外です。
薬液のpH・比重・濃度・粘度の高さ、 混合液、添加剤の種類、量、液温度など(各モデルのカタログに記載されています)によって 耐薬性は変わりますので、耐薬の保証はできません。 上記は当社の耐薬基準(比重1.1MAX)による目安です。ヒーター選択のご参考にしてください。 不明の場合はご相談ください
キャップレス潜水® 石英ヒーター キャップレス防水®・キャップサイド防水 石英ヒーター BOUSUI構造/キャップレス防水®・キャップサイド防水

TG.ステンレス外管ヒーター《ステンレスヒーターファミリー》

ステンレス外管ヒーターは、アルカリ性の薬液に対して優れた耐腐食性を持っています。また、金属製であるため、フッ素樹脂外管や石英外管のヒーターと比べて熱伝導率が高く、効率的な加熱が可能です。ただし、この高い熱効率はメリットである一方で、対流が起こりにくい粘度の高い薬液や、急激な温度変化を嫌う薬液に対してはデメリットとなる場合があります。穏やかな加熱が求められる場合は、薬液に優しい「スローウォーム設計」のフッ素樹脂ヒーターファミリーをお勧めします。

当社のステンレスヒーターファミリーは、半世紀以上にわたり、SUS304よりも耐食性に優れ、特に孔食(点食)や隙間腐食への耐性が高いSUS316を採用してきました。そして、新世代商品からは、SUS316より粒界腐食に対する耐性が高いSUS316Lを採用しています。 (「L」は「Low Carbon」を意味し、炭素含有量が最大0.03%です。)

SUS316とSUS316Lは多くの薬品に対する耐性はほぼ同等ですが、SUS316Lの方が溶接後の耐食性に優れています。 さらに、新世代のステンレスヒーターファミリーでは、ヒーター表面への付着物による腐食を低減させるため、表面を600メッシュのバフ研磨仕上げとしています。

なお、ステンレスヒーターファミリーは、一部の弱酸を除き、基本的に酸性の薬液には適用できません。酸性の薬液を使用される場合は、他の材質(ファミリー)のヒーターをご検討ください。

ヒーター名 耐 薬 参 考
SUS316L・#600研磨仕上げ
キャップレス潜水®キャップレス防水®
槽横挿入/タニペット

ステンレスヒーター
弱アルカリ~水向。
アルカリ脱脂浴・銅めっき浴・銅ストライク浴・苛性ソーダ10%希釈液等まで(比重の高い苛性ソーダは特別設計またはUU・フロンで対応します。)
  • 化研浴は適用外です。
  • 弱酸・強酸・フッ酸・フッ化物含有液(例:添加物入りクローム液等)は適用外です。
薬液のpH・比重・濃度・粘度の高さ、 混合液、添加剤の種類、量、液温度など(各モデルのカタログに記載されています)によって 耐薬性は変わりますので、耐薬の保証はできません。 上記は当社の耐薬基準(比重1.1MAX)による目安です。ヒーター選択のご参考にしてください。 不明の場合はご相談ください
キャップレス潜水® ステンレスヒーター キャップレス防水®・キャップサイド防水 ステンレスヒーター
槽横挿入 ステンレスヒーター/タニペット ミニ ステンレスヒーター

TG.チタン外管ヒーター《チタンヒーターファミリー》

チタンヒーターファミリーは高い強度と軽量性を兼ね備えています。ステンレスに比べると設置や移動が容易であり、メンテナンス時の作業性が向上します。また、チタンは耐食性に優れ、特に海水での使用に適しています。経年変化が少なく、長期使用においても高い信頼性を保ちます。熱伝導性についてはステンレスと同等の性能を有しており、安定した温度制御が可能です。

一方、チタンはその強度ゆえに加工や溶接に高度な技術を要します。また、比較的に高価な素材であるため、ステンレスよりも価格が高くなります。耐酸性についてはステンレスを上回りますが、薬液の種類によってはチタンと反応する可能性があるため、使用前に必ず薬液との適合性確認が必要です。

ヒーター名 耐 薬 参 考
一部の弱酸・海水向。
  • 半光沢ニッケル浴・塩化第二鉄浴に使われることがありますが、耐蝕については薬品の専門家とご相談ください。
  • 一般の弱酸・強酸・フッ酸・フッ化物含有液(例:添加物入りクローム液等)は適用外です。
薬液のpH・比重・濃度・粘度の高さ、 混合液、添加剤の種類、量、液温度など(各モデルのカタログに記載されています)によって 耐薬性は変わりますので、耐薬の保証はできません。 上記は当社の耐薬基準(比重1.1MAX)による目安です。ヒーター選択のご参考にしてください。 不明の場合はご相談ください
キャップレス潜水®・キャップレス防水® チタンヒーター 槽横挿入・タニペット チタンヒーター

TG.セラミックス外管ヒーター《セラミックスヒーターファミリー》

ファインセラミックスは、厳選された原料を使用し、精密に調整された化学組成と徹底管理された製造プロセスによって作られた高精度セラミックスです。セラミックスヒーターファミリーは、このファインセラミックスに特殊エレメントのプリント回路を一体化、液中使用に最適化された高性能ヒーターで、試作ライン・研究・実験室などを対象としています。

小型・軽量・高ワット密度型で昇温が早く、小さい槽に高容量の熱源が必要な場合に最適なヒーターです。非金属ですので電気絶縁性・耐電圧製が優れており、また、加熱する液に金属イオンが滲出しませんので、金属イオンを嫌う薬液に適しています。

強酸やアルカリは適用外ですので、それらを使用される場合はフッ素樹脂ヒーターファミリーのミニヒーターグループの採用をご検討ください。

ヒーター名 耐 薬 参 考
ファインセラミックス
ハイワットセラヒーター
超小型・高容量・純水・弱酸向
薬液のpH・比重・濃度・粘度の高さ、 混合液、添加剤の種類、量、液温度など(各モデルのカタログに記載されています)によって 耐薬性は変わりますので、耐薬の保証はできません。 上記は当社の耐薬基準(比重1.1MAX)による目安です。ヒーター選択のご参考にしてください。 不明の場合はご相談ください
セラミックスヒーター ハイワットセラヒーター